昨年の2021年は「浅川巧生誕130年(没90年)」「妻みつえ没100年」「浅川伯教・巧兄弟資料館開館20周年」「映画:道~白磁の人制作 10周年」が重なった節目の年でした。
この節目の年に合わせて構想から5年をかけて、学習漫画「評伝~浅川伯教と巧・14冊の日記帳」を刊行することができました。
この漫画本は未来を拓く多くの方々に浅川兄弟の生き方や精神を学んで頂きたいと願いから、山梨県内や北杜市内の公立図書館や小学校、中学校などにも献本させて頂きました。
そして駐日大韓民国韓国文化院、駐日本大韓民国民団本部、浅川伯教・巧兄弟を偲ぶ会のご協力をいただきながら、夏休み期間を利用して小・中学生対象の『読書感想文』を募集したところ、多くの応募がありました。
このたび12月3日には『表彰式』が行われました。緊張の中にも誇らしく入賞者は授与されました。
この漫画の刊行によって、小・中学生の方々が浅川兄弟において、国や人種を差別しない人間としての生き方を学ぶ機会が持てたことをうれしく思います。
また、この漫画がきっかけになり、地元の学校からの講演依頼などもあり、直接生徒さんたちにお話をするこことが増えて、大変うれしく思います
12月吉日 館長 比奈田 善彦
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(上村北杜市長と受賞者と審査員の皆さん)~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ここで審査員の一人で原作者でもある浅川伯教・巧兄弟資料館元館長 澤谷滋子氏からの
市長賞を受賞したお二人への講評をご紹介します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
●市長賞 中学生の部 甲陵中学校3年 横森穂夏さんへ
横森さんは『評伝 浅川伯教・巧』を読んで、その感想文に「平和ということ」というタイトルをつけました。「他の国や地域を理解したり、対等に交流を深めたりする」ことを平和と捉え、そこに至るまでの兄弟の心の葛藤、たとえば「芸術に本気で専念しなければ、朝鮮人を犠牲にして作られ続けているこの命に意味はない」とか、巧の「一体自分に何ができるのだろう」という葛藤を読み取り、その葛藤があって現在の日本と朝鮮の架け橋になりえたのだ、と気づいたと私には思えました。「西山の奥に世界のあるも知らず吾が育ちたる逸見の台かな」。この伯教の短歌に現在のウクライナの戦火に対する横森さんの立ち位置を見出し、平和について考えた深い感想文でした。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
●市長賞 小学生の部 武川小学校6年 福井そよ香さんへ
福井さんは、浅川兄弟の生き方には「時代を越えて受け継がれていくもの」が流れていると捉えました。例えば巧の「常に自然に学ぶ態度」、たとえば伯教の「日本人と朝鮮人が仲良くなるには政治ではなく、芸術であるべき」という言葉。そして福井さんは「違うところを認め合い、お互いを尊重すること」が、時代を越えて受け継いでいくことだと気づきました。また、この本をきっかけに日本と韓国の関係を調べたり、巧が林業を仕事にするようになったのは、明治時代の山の乱伐による土砂崩れが影響していることを知り、今後、環境問題にも着目していきたいとも考えるようになったとのこと。この本を読んだことで、さまざまな問題意識を持ったことが大変印象深い感想文でした。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
皆さまのたくさんのご応募に感謝申し上げます。
一つ一つ大切に心をこめて、読ませていただきました。
★感想文作品集は「たかね図書館」にて閲覧、貸出可能です