7月9日(土)、第2回「『巧の日記』を読む」を行いました。
8月の日記は今までの月と比べて、長いものになっています。
巧にとって、考えること、思うことが多い月であったと言えるでしょう。
8月の巧は、美しいものにも、自らの心持ちに対しても、
それまでよりも強く日記に感情を吐露しています。
長いので、今回の朗読は大正11年8月1日の日記から18日分までです。
一部を紹介します。
8月6日には、朝から蓮の花摘みに出かけ、
「蓮の花を例の蓮花染付の壷に挿したら美しかつた。部屋中に輝いた。
牧栄はお嬢さんのようだと評した。子供の実感は当つてゐる」と著しています。
暑い夏の日に、白く膨らんだ蓮の花で涼をとる様子に、
巧のお気に入りである「蓮花文壷」の華やぐ姿が見えるようです。
また翌7日は、柳宗悦から来た原稿
「失われんとする一朝鮮建築の為に」を読んで、
「柳さんから光化門を弔うための原稿が来た。なかなかよく書けて居る。
これを読んだら誰でも朝鮮に対する同情、人類的の愛が怯えると思ふ」
と記しています。
朝鮮人に対して無理解な日本人に向けた、
巧の心情がよく表れている日です。
15日では、交流のあった若い軍人たちと雑談し、
うち一人が
「今度戦争があったら金鵄勲章を得るか死ぬか
どつちかにする覚悟だ」というのに対して、
「君が金鵄勲章を貰つて凱旋する時
僕は非戦論者の故を以て監獄に居るであろう」と答え、
「これだけは僕の本音だ」と書いています。
植民地政策、軍のあり方に対して、巧の真情が伝わってきます。
そのほかにも、武者小路実篤の謳う「新しき村」についても、
巧は率直に意見を述べています。
「新しき村」についての巧の考えは、
19日以降もたくさん書き綴っていますので、
8月20日(土)の第3回講座はそのあたりもお話できるかと思います。
皆様のご参加をお待ち申し上げます。
今回も下條先生がお持ちくださった美しい夏椿や紫陽花、紫露草が、
会場を涼やかにしてくれました。
お暑い中、ご出席いただきました皆様、ありがとうございました。